未到
熊谷直実
くまがいなおざね
kumagai naozane
略歴
平安末から鎌倉初期の武蔵国の武士で、坂東武者らしい荒々しさと、後半生の深い信仰心とをあわせ持った人物として知られる。源平の争乱では源氏方に属して各地を転戦し、なかでも一ノ谷の戦いでの逸話が名高い。敗走する平家の若武者を波打ち際に呼び止め、組み伏せて首を取ろうとしたところ、相手が我が子ほどの年頃の美しい少年であったため討つのをためらったと『平家物語』は伝える。それが平清盛の甥・平敦盛であり、名乗りもさせぬまま討ち取らざるをえなかったこの一事が、直実に武士として殺生を重ねる身の無常を痛感させたという。やがて彼は出家して法然の門に入り、念仏の道に生きた。武勇の人が発心して仏道に転じたその生涯は、後世に能や幸若舞の題材となり、武士の生き方と救済をめぐる物語として長く語り継がれた。
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